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思い込みが勘を鈍らせる

 投稿者:kaz  投稿日:2013年 7月14日(日)03時14分43秒
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  書き込もうかな…と思ってから、はや数日が経過。こうしてどんどん遅れていくのです。

今日は、長い文章を。

流通しているカレハカマキリ類のうち、メダマカレハカマキリ以外の種では、産卵後のメスが卵嚢に寄り添う行動が知られています。メスは基本的に卵嚢の孵化まで離れないため、卵嚢を「保護」していると捉えられています。私自身、メスが何かから卵嚢を保護している行動なのかな…?と想像してはいます。しかし、寄り添う行動の機能が正確に示されていない以上、これは現状では「保護」ではなく「随伴」と表現されるべきでしょう。

多くの方が、卵嚢への随伴はカレハカマキリ類にほぼ特異的な行動であると考えていることでしょう。しかし、他のカマキリでも随伴する種があるかも…と考えさせられる情報は、無くはありません。その1つが、このリンク先のブログです。
http://khaoyaim.exblog.jp/13125139/
これを見る限り、もしかしたらカゲロウカマキリの一種(なお、ブログ内の学名は間違っています)でも卵嚢への随伴があるのかも知れません。ちなみに私は、昔このブログを読んだあとで、真偽を確かめるべく本種をお店から買い求めたことがありましたが…入手できたのが未交尾のメス成虫で、かつ産み渋ったので、ゲームオーバーでした。ちゃんちゃん。

さて、もう1ヶ月以上前になりますが、十郎さんから素晴らしいマレー土産をいただきました。外見はムネアカハラビロのそっくりさん。しかも2個体のうち一方は、卵嚢付きの母親成虫とのことでした。現地での入手のタイミング等を考慮すると、このハラビロは卵嚢を保護する種なのでは…?とは、十郎さんの考察。しかし私は、ハラビロカマキリ類はカマキリのなかでも特に共食い傾向の強いグループなので、卵嚢に随伴あるいは保護なんてしないのでは?と考えていました。このあたりの経緯について、詳しくは十郎さんの掲示板の5月22日から28日までの十郎さんと私のやり取りをご一読下さい。

私がハラビロカマキリ類で卵嚢への随伴行動が無かろうと思った理由と、ハラビロカマキリ類が特に共食い傾向の強い種であることに、どのような関連があるかと言いますと…。カレハカマキリ類の繁殖を経験された方ならご存知だとは思いますが、メス成虫が随伴する卵嚢から幼虫が孵化する際、母カマキリは孵化してきた幼虫たちに対して、捕食するなどの攻撃は一切加えません。それどころか、体の上を這い回られることも許容します。ちなみに、卵嚢に随伴しない種では、ケージ内にある自らの卵嚢から幼虫が孵化すると、これを積極的に捕食します。また、体の上を幼虫に這い回られると、体を振る、身をよじるなどして拒絶します。このように、本来カマキリにとって目の前を蠢く小昆虫は全て捕食対象となり得ますが、卵嚢に随伴する種では幼虫を実子であると識別できているのか、捕食しないことが重要なポイントです。また、カレハカマキリ類のように卵嚢への随伴がある種では、孵化した幼虫同士も共食いが非常に少ないという特徴があります。孵化直後から2齢程度までは共食いはほぼ皆無で、大型の幼虫になっても他のカマキリ類よりも共食い傾向は低いままです。これは想像ですが、孵化直後の幼虫の分散性が低く、(メス成虫の近くで)幼虫たちが集団を形成している期間が、他のカマキリよりも長いのではないでしょうか。そういう状況を仮定すると、集団を形成する上で共食い傾向が弱いという性質も納得できます(集団を形成する性質を持つ種の共食い傾向が強いと、矛盾しますからね)。

これらの点を考慮すると、ハラビロカマキリ類というグループは、卵嚢への随伴行動をとる種としては、性質が荒過ぎるように思うのです。もちろん、マレー土産の孵化後、飼育しながらそれらを確認するつもりではいました。しかし心の中では、十中八九、卵嚢への随伴は無かろうと決めつけていました。

やがて幸運にもその卵嚢は孵化し、多数の幼虫が得られました。それらを飼育するうち、私は少し性質の違いが気になってきました。件の大型ムネアカハラビロは、幼虫同士の共食いが少ないのです。彼らは、共食いが非っ常ーに少ないカレハカマキリ類と比較すると、もちろん共食いは多い方です。しかし、馬鹿みたいに共食いする他のハラビロ類よりは明らかに共食いが少ないです。共食いが比較的少ないハラビロ…なんとも不思議な存在です。

ハラビロカマキリ類に卵嚢随伴行動は無かろう。私がそんな思い込みを改めなければならないと思ったもう一つのきっかけが、以下の画像です。
http://www.flickr.com/photos/capepaperu/6933035125/
ハラビロカマキリ類の飼育経験が豊富な方なら、この画像の衝撃がお解りいただけるでしょう。多数の幼虫(サイズ的に孵化直後の1齢でしょう)と、それに随伴するメス成虫。成虫の腹部はペチャンコなのに、幼虫たちを捕食しているような様子はありません。インドネシアで撮影されたこの写真は、ハラビロカマキリ類にも卵嚢への随伴が見られる可能性を示唆するに十分な情報です。
形態を観察する限り、この画像の種は、今回私が十郎さんからいただいた大型ムネアカハラビロとは別種のようです(なお、この画像も学名が間違っています)。性質が荒く、卵嚢への随伴や他個体への親和性とは程遠い印象であったハラビロカマキリ類…もしかしたら、有り得なさそうな卵嚢随伴が有り得るのかも知れません。今後は思い込みに振り回されず、淡々と結果を確認しながら、真偽を明らかにしたいと思います。
余談ですが、実はこの画像は、随分前にも1度見たことがあるものでした。こういう興味深い画像やサイトはブックマークしてあるのですが、それをすっかり忘れていました。そうして最近になって再度ウェブ上で見つけてまるで初めて見たかのように感動してしまったわけです。我ながらヒドイ記憶力です…。


[画像]
1枚目
これが十郎さんにいただいたマレー産大型ムネアカハラビロ。2個体とも9cm以上あり、おそらく平均的にも日本のムネアカハラビロよりも大きいのであろう。より大きく、より太く…ある意味、上位互換。

2枚目
威嚇姿勢。まさに胸赤。ちなみに、鎌に挟まれたらものすごく痛かった。

http://mantidmaniacs.net/

 
 
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